コラム



むくみ(浮腫)とは、体内の水分が細胞と細胞の間の組織液として異常に増加し、皮膚の下に溜まることで、体が腫れぼったくなる状態を指します。このむくみは、様々な原因で引き起こされますが、高血圧と密接な関係があることが知られています。
通常、私たちの体内では、血液が流れる毛細血管と、細胞の間を満たす組織液との間で水分のやり取りがバランス良く行われています。毛細血管からは水分や栄養素が組織液へ染み出し、同時に老廃物を含む水分が組織液から毛細血管やリンパ管へと戻されます。このバランスが崩れると、組織液が過剰になりむくみとして現れるのです。
高血圧の場合、血管内の圧力、特に毛細血管内の静水圧が高まります。この高い圧力が、毛細血管から組織液へと水分が押し出される力を強め、結果として組織液の増加を招きやすくなります。つまり、高血圧は血管から水分が漏れ出しやすい状態を作り出すため、むくみが生じやすくなるのです。また、高血圧が長期間続くと、血管自体に負担がかかり、血管の透過性が変化することで、さらに水分が漏れ出しやすくなることもあります。
さらに、高血圧の背景には、塩分の過剰摂取が関わっていることが多くあります。塩分(ナトリウム)は体内の水分を保持する性質があるため、塩分を摂りすぎると、体内の水分量が増加し、血液量も増えて血圧が上昇します。この増加した血液量も、毛細血管にかかる圧力を高め、むくみを悪化させる要因となります。
高血圧が原因でむくみが生じる場合、特定のサインが見られることがあります。最も一般的なのは、足や足首、ふくらはぎといった体の下部にむくみが現れることです。これは、重力の影響で水分が下半身に溜まりやすいためです。特に、夕方になると靴下の跡がくっきり残る、靴がきつく感じる、指で押すとへこんだまましばらく戻らない(圧痕性浮腫)といった症状は、むくみの典型的なサインです。
また、顔や手のむくみも現れることがありますが、これらはより重度のむくみや、腎臓機能の低下が関与している可能性も示唆します。特に、朝起きた時に顔が腫れぼったい、まぶたが重いといった症状が見られる場合は注意が必要です。
高血圧によるむくみは、単なる見た目の問題だけでなく、体内の水分バランスの異常や、心臓・腎臓への負担が増大しているサインである可能性も考えられます。そのため、これらのむくみのサインに気づいた場合は、放置せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

高血圧とむくみは、一見すると別々の症状に見えるかもしれませんが、これらが同時に現れる場合、体内で深刻な問題が進行している可能性があります。特に、高血圧とむくみの両方を放置することは、全身の血管や臓器に大きな負担をかけ、取り返しのつかない健康被害を引き起こすリスクを高めます。
高血圧が続くと、全身の血管に常に高い圧力がかかり、特に繊細な血管が集まる臓器にダメージを与えます。その代表的な臓器が腎臓と心臓です。
腎臓への負担: 腎臓は体内の老廃物をろ過し、余分な水分や塩分を排出する重要な役割を担っています。しかし、高血圧によって腎臓の血管(腎臓内の細い血管である糸球体)に常に高い圧力がかると、血管が硬くなったり(腎硬化症)、損傷したりします。これにより、腎臓の機能が徐々に低下し、体内の水分や塩分が適切に排出されなくなり、むくみがさらに悪化するという悪循環に陥ります。最終的には、慢性腎臓病へと進行する可能性があります。
心臓への負担: 高血圧は心臓にも大きな負担をかけます。全身に血液を送り出すために、心臓はより強い力で収縮しなければならず、その結果、心臓の筋肉が厚く肥大します(心肥大)。心肥大が進むと、心臓は効率的に血液を送り出せなくなり、全身への血流が悪化します。これにより、体液が血管外に漏れ出しやすくなり、特に足や顔にむくみが生じやすくなります。さらに、心臓の機能が低下すると、心不全へと進行するリスクが高まります。
| 合併症の種類 | 主な症状とリスク |
|---|---|
| 慢性腎臓病 (CKD) | 腎臓の機能が長期にわたって低下し、老廃物や水分が体内に蓄積します。進行すると人工透析が必要になることもあります。むくみはCKDの主要な症状の一つです。 |
| 心不全 | 心臓が全身に十分な血液を送り出せなくなる状態です。息切れ、疲労感、全身のむくみ(特に下肢)などが現れ、生活の質が著しく低下します。 |
| 脳卒中(脳梗塞・脳出血) | 高血圧により脳の血管が損傷し、詰まったり破れたりすることで発症します。手足の麻痺、言語障害、意識障害などを引き起こし、後遺症が残ったり、命に関わることもあります。 |
| 心筋梗塞 | 心臓を養う冠動脈が動脈硬化によって狭くなり、最終的に閉塞することで心臓の筋肉が壊死する病気です。激しい胸の痛みや呼吸困難を伴い、緊急治療が必要です。 |
| 大動脈瘤・大動脈解離 | 高血圧によって大動脈の壁に負担がかかり、血管が膨らんだり(動脈瘤)、壁が裂けたり(動脈解離)することがあります。どちらも破裂すると大量出血により死に至る危険性が高い状態です。 |
| 末梢動脈疾患 | 手足の血管(特に足)が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりする病気です。歩行時の痛み(間欠性跛行)、しびれ、冷感などが現れ、重症化すると潰瘍や壊死に至ることもあります。 |
これらの合併症は、一度発症すると元の状態に戻すことが非常に困難であり、長期にわたる治療や生活習慣の大きな変更が必要となります。高血圧とむくみのサインを見逃さず、早期に対策を講じることが、これらの重篤なリスクを回避するために最も重要です。

高血圧とむくみの管理において、食事は非常に重要な役割を果たします。食生活を見直すことで、これらの症状を和らげ、健康的な生活を送ることが期待できます。特に、塩分摂取量の調整と、体内の水分バランスを整える栄養素の積極的な摂取が鍵となります。
食塩の過剰摂取は、高血圧とむくみの主な原因の一つです。体内に過剰なナトリウムが取り込まれると、体は血液中のナトリウム濃度を一定に保とうとして水分を溜め込みます。これにより血液量が増加し、心臓に負担がかかり血圧が上昇します。また、血管への圧力が強まることで、むくみも引き起こされやすくなります。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人男性の1日あたりの食塩摂取目標量を7.5g未満、成人女性は6.5g未満としています。しかし、高血圧の治療中の方や予防を目的とする場合は、さらに厳しい1日6.0g未満が推奨されています。残念ながら、現在の日本人の平均食塩摂取量はこれらの目標量を上回っているのが現状です。減塩は高血圧やむくみへの対処において重要な要素であり、心臓や腎臓への負担を軽減するためにも積極的に取り組むべき食習慣です。
「減塩すると味気なくなる」と感じる方も少なくありませんが、工夫次第でおいしさを保ちながら減塩することは可能です。だしをしっかり取ることでうま味を活かしたり、レモンやゆずなどの柑橘類、酢などの酸味を活用したりすることで、塩味に頼らずに風味豊かな食事を楽しめます。また、ショウガ、ワサビ、カレー粉、ハーブ、ゴマなどの香辛料や薬味を取り入れるのも効果的です。
加工食品やインスタント食品、外食、市販の弁当などには「隠れ塩分」が多く含まれているため、これらを控えることも重要です。麺類の汁はできるだけ残すようにするだけでも、塩分摂取量を大きく減らせます。新鮮な食材を選び、素材本来の味を活かす調理法を心がけることも、減塩を続ける上で大切なポイントです。
カリウムは、体内の過剰なナトリウム(塩分)を体外に排出するのを助ける重要なミネラルです。これにより、血圧の維持やむくみへの対処に役立つと考えられています。カリウムは細胞の浸透圧や水分バランスの調整にも関わっており、高血圧やむくみへの対処に役立つことが期待されます。
カリウムを豊富に含む食品を積極的に食事に取り入れましょう。特に、以下の食品がおすすめです。
ただし、腎機能が低下している方は、カリウムの摂取量を制限する必要がある場合があります。過剰なカリウム摂取は高カリウム血症を引き起こし、不整脈などの重篤な症状につながる可能性があるため、必ず医師や管理栄養士に相談してください。野菜を茹でることでカリウムの一部を減らすことができます。生活習慣病予防のための1日あたりのカリウム摂取目標量は、男性で3,000mg、女性で2,600mgとされています。
減塩を継続するためには、食事のおいしさを損なわないことが重要です。「FALK SALT(ファルクソルト)」の減塩タイプは、味や見た目を損なうことなく、塩分摂取量を減らすことにつながる天然の天日塩です。
FALK SALTの減塩タイプは、チリのアタカマ砂漠の地下にある塩湖から採取される天然の海塩を原料としています。この塩は、独自の天日乾燥プロセスにより、塩化ナトリウム(NaCl)と塩化カリウム(KCl)が自然に結晶化し、一粒の中に共存しているのが特徴です。これにより、一般的な食塩と比較してナトリウム含有量を約35%削減しながらも、塩本来の風味を保つことができます。
通常の食塩とFALK SALTの減塩タイプの主な違いは以下の通りです。
| 項目 | 一般的な食塩 | FALK SALT 減塩タイプ |
|---|---|---|
| 主成分 | 塩化ナトリウム(NaCl)100%に近い | 塩化ナトリウム(約65%)、塩化カリウム(約30%)およびその他ミネラル |
| ナトリウム含有量 | 高い | 一般的な食塩より約35%少ない |
| 特徴 | 純粋な塩味 | ナトリウムとカリウムが自然に結晶化した天然海塩 |
| 風味 | 強い塩味 | 塩味を保ちつつ、まろやかな風味 |
FALK SALTの減塩タイプを料理に活用することで、日々の食事で無理なく減塩を進め、高血圧やむくみへの対処における食生活の工夫に役立てることができます。幅広い料理に通常の塩と同じように使用できるため、減塩食のレパートリーを広げたい方におすすめです。


高血圧とむくみへの対処には、適度な運動を習慣にすることが重要です。運動は血圧の維持に役立つだけでなく、全身の血行促進や体内の水分代謝のサポートにつながることが期待できます。
運動が血圧に与える影響として、有酸素運動は血管内皮機能を改善し、血管の柔軟性を高めることで血圧を下げるとされています。これにより、収縮期血圧で3~8mmHg、拡張期血圧で2~5mmHgの低下につながる可能性があるという報告もあります。また、運動は自律神経のバランスを整え、ストレス軽減にもつながるため、精神的な側面からも血圧管理に良い影響をもたらします。
むくみに対しては、運動によって心臓から送り出された血液が、ふくらはぎなどの筋肉がポンプのように働く「筋ポンプ作用」により心臓へと戻されます。この作用が活発になることで、下半身に滞りがちな血液やリンパ液の流れが促進され、余分な水分や老廃物の排出をサポートすることが期待できます。特に運動不足は筋力低下を招き、むくみの原因となることが指摘されています。
推奨される運動の種類としては、ウォーキング、軽いジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動が効果的です。これらは心肺機能を高め、全身の血行促進に役立つと考えられます。さらに、軽めの筋力トレーニング(スクワットや腕立て伏せなど)を有酸素運動と組み合わせることで、より高い相乗効果が期待できます。筋肉量が増えることは基礎代謝の向上にもつながり、血圧の管理にも良い影響を与えることが期待できます。また、運動前後のストレッチや日常的なストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、血行促進に有効です。
運動の目安としては、「ややきつい」と感じる程度の中強度が適切とされています。これは、会話はできるものの、少し息が弾む程度の強度を指します。具体的には、1回30分程度の運動を週3~5回、合計で週150分以上を目標にすると効果的です。運動習慣のない方は、1日10分からでも継続することが重要です。
ただし、運動を始める前には、必ず医師に相談し、自身の健康状態に合わせた運動計画を立てることが重要です。特に、血圧が非常に高い場合(収縮期180mmHg以上、拡張期110mmHg以上)や、心臓病、腎臓病、糖尿病などの持病がある場合は、専門医の指導のもとで慎重に進める必要があります。運動中に胸の痛み、めまい、強い息切れなどの症状が現れた場合は、すぐに中止し、速やかに医療機関を受診してください。運動前後の水分補給も忘れずに行いましょう。
肥満は高血圧とむくみの両方にとって主要なリスク因子です。適切な体重管理は、これらの症状への対処に直接つながることが期待できます。
肥満、特に内臓脂肪の蓄積は、体内の血液量を増加させ、心臓への負担を大きくします。また、インスリン抵抗性を引き起こし、血圧を上昇させる原因となることがあります。高血圧の約90%は生活習慣が影響する「本態性高血圧」であり、肥満はその主要な要因の一つです。体重が増加すると、体内の水分量も増えやすくなり、特に心臓や腎臓に負担がかかることで、余分な水分が体内に滞留しやすくなり、むくみとして現れることがあります。急激な体重増加(2~3日で数キログラム)は、むくみが原因である可能性が高いとされています。
適正体重を維持することは、血圧の維持に役立ち、高血圧の予防や対処において非常に重要です。体重を減らすことで、心臓や腎臓への負担が軽減され、体内の水分バランスが整いやすくなり、むくみへの対処につながることが期待できます。さらに、肥満を解消することは、糖尿病や脂質異常症といった他の生活習慣病のリスクも低減し、全身の健康維持に大きく貢献することが期待できます。
具体的な取り組みとしては、過剰な塩分摂取を控え、野菜や果物を積極的に摂るなど、栄養バランスの取れた食生活を心がけることが基本となります(食事に関する詳細は「高血圧とむくみを和らげる食事のポイント」の章をご参照ください)。また、前述の「適度な運動」を継続することで、消費カロリーを増やし、脂肪燃焼を促進します。筋肉量を増やすことも基礎代謝向上に繋がり、太りにくい体質づくりをサポートします。急激な減量ではなく、無理のない範囲で長期的な目標を設定し、継続することが成功の鍵です。自身の身長に見合った標準体重(BMI22)を参考に、必要に応じて専門家と相談しながら目標を設定するのも良いでしょう。

高血圧とむくみの症状が見られる場合、多くは生活習慣の改善で対応可能ですが、中には早急な医療機関の受診が必要なケースも存在します。特に、高血圧を抱えている方が特定のむくみ症状を経験した際には、自己判断せずに医師の診察を受けることが重要です。
むくみは日常的によく見られる症状ですが、以下のような特徴を伴うむくみは、心臓や腎臓、肝臓などの重大な疾患が隠れている可能性があるため、速やかに医師の診察を受ける必要があります。
数時間から数日のうちに急激に現れるむくみや、体の一部分、特に片方の手足のみに現れるむくみは、血栓症や炎症など、緊急性の高い病態を示唆していることがあります。例えば、片足だけが腫れ、痛みや熱感を伴う場合は、深部静脈血栓症の可能性も考慮されます。
むくみに加えて、息切れ、呼吸困難、胸の痛み、動悸などの症状がある場合、心不全や肺水腫といった命に関わる状態である可能性があります。特に、横になると息苦しくなる(起座呼吸)場合は、肺に水が溜まっている兆候かもしれません。このような症状が見られた際は、救急車を呼ぶなど、一刻も早い対応が必要です。
顔全体が腫れぼったくなる、まぶたが重い、あるいは全身にむくみが広がり、短期間で体重が急激に増加する場合は、腎臓の機能低下が疑われます。腎臓は体内の水分や塩分バランスを調整する重要な臓器であり、その機能が損なわれると、体内に余分な水分が溜まりやすくなります。尿の量が減る、色が濃くなるなどの変化も同時に見られることがあります。
高血圧とむくみは、自覚症状がないまま進行することが多いため、定期的な健康診断が非常に重要です。健康診断では、血圧測定、尿検査、血液検査などが行われ、これらの検査によって、高血圧の状態や腎機能、心機能の異常を早期に発見することができます。
特に、高血圧と診断されている方や、むくみやすい体質の方は、年に一度は健康診断を受け、自身の健康状態を把握し、早期の対策を講じることが、重篤な合併症を防ぐ上で不可欠です。例えば、日本人間ドック・予防医療学会では、生活習慣病の早期発見のために人間ドックの受診を推奨しています。定期的なチェックアップを通じて、医師と相談しながら適切な管理を継続しましょう。

高血圧とむくみは密接に関連しており、放置すると腎臓や心臓に大きな負担をかけ、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。これらに対処するためには、減塩を意識した食事やカリウムを豊富に含む食品の摂取、適度な運動、体重管理といった生活習慣の見直しが重要です。しかし、自己判断で対処せず、症状が続く場合や緊急性の高いむくみが見られる場合は、速やかに医療機関を受診し、専門医の診断と指導を受けることが何よりも重要です。日々の意識と早期の適切な対応が、健康的な生活を送るための一助となります。